はっぴと言えば、思い出されるのが、ミシンの街頭販売です。

地方にある、地元では有名なデパートの入り口付近をお借りして、先輩と二人で、実演販売を行いました。入り口と言っても、メインのほうではなく、少し大通りから外れた場所にある、小さなドアのそのまた横のスペースです。先輩から、こちらのデパートは地元では有名な老舗なので、あまり大きな声では、お客さんにアプローチしないようにとの注意がありました。ただ売り込みの佳境に差し掛かると、どうしても声が大きくなり、そのたび先輩から目で合図されるのが、うっとうしかったのを覚えています。多分はっぴなどという、着慣れないものを着ているという、気恥ずかしさあったのでしょう。

それでも、日数がたつうちに慣れもあったのか、売り上げも順調に揚がり、後数日で、帰れるという時でした。地元のチンピラにからまれたのでした。先輩と言えば、見て見ぬ振りをするだけで、何もしてくれません。なんと言うことのない言葉に一々反応し、イヤガラセをするのでした。あろうことか、はっぴにまでいちゃもんをつける始末。もう少しでキレそうになったとき、巡回中の警官の姿を見たチンピラが立ち去り、事無きを得ました。

先輩に言わせると、正業についているわれわれが、羨ましいのだから、相手にすべきではないのだそうです。それはそうですが、「それでは明日もし彼らが来たら、相手をお願いします」と言ったのですが、あらぬ方向を見るだけで、何も言いません。それ以上追求するだけ無駄だと悟ったわたしは、今回の出張を最後に、辞職を決意したのでした。そして、明日着るのが最後になる、はっぴを畳むのでした。

今日が路上販売の最後という日、案の定、例のチンピラたちがやってきました。それもお客さんが集まり始めた矢先、因縁をつけ始めたのです。当然他のお客さんは、クモの子を散らすように消えてしまいました。後わずかでノルマを達成できるというところで、邪魔をされたわけです。嫌な笑みを残しながら、彼らは去っていきましたが、満足そうな態度が気になっていました。 後日談ですが、彼らはなんとライバル会社に雇われて、警察沙汰にならない程度の嫌がらせをする、という約束で小銭をもらっていたのでした。これがわたしのはっぴを脱ぐきっかけになった、つまらない事件の顛末です。

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